日本の国鳥がキジになった理由は?
戦後に鳥類保護の思想普及のために設定された
日本の国鳥が「キジ」に指定されたのは、戦後間もない1947(昭和8)年のことです。
当時の日本にはまだ鳥類保護の思想は普及しておらず、あちこちで野鳥が捕られていました。
マッカーサー率いる連合国軍総司令部天然資源局の野外生物課長として日本に赴任していたオースチン博士は、日本の鳥が減少していることを指摘し、野鳥を保護するように日本政府に勧告しまし た。
これを受け、当時の農林省は狩猟鳥の制限を厳しくし、文部省は愛鳥教育を取り入れました。
その一つとして、バードデー(愛鳥日)が制定されることになりました。
当時、バードデーは4月10日でしたが、現在はバードウィーク(愛鳥週間)と名称が変わり、期間も5月8日~9日になりました。
国鳥にキジを選んだ理由は?
文部省は、バードデーの設定に関連して鳥類保護の思想を普及させるのに、象徴となる国鳥の選定を、鳥学者が集まる日本鳥学会に依頼しました。
これを受けた日本鳥学会では、同年3月9日の第8回例会で国鳥の選定を議論することにしました。
当時の文献から、この会の様子をうかがい知るこ とができます。鳥学者ら3名が出席し、こんな会話が交わされました。
「どの鳥を国鳥にしたらいいでしょうか」
「キジか、ヤマドリがよいと思います。日本特産の種類ですし」
「平和の象徴のハトはいかがでしょうか」
「美しい声で歌うヒバリやウグイスもいいですね」
という意見がかわされ、最も多くの票を得たのがキジでした。
キジが多くの票を得たのにはいくつか理由があります。
まず1つ目は日本特産種の一つで、本州・四国・九州で一年中見られる留鳥であること。
日本特産種の一 中でもキジは人里近くに生息し、目にする機会も多い鳥です。
2つ目に、雄の美しい羽色や勇敢な性質、雌雄の母性愛の強さなどの性質が多くの人に好まれているこ と。
キジの雌は「焼野の雑、夜の鶴」ということわざがあるように、野火が巣に近づいてきても巣を離れず、自分の身が危険になっても卵を抱き続ける習性を持つとして、一般に母性愛が強い鳥といわれています。
3つ目に、日本の文学や芸術などで、古くから親しまれていること。
たとえば、昔話の「桃太郎」な どは子供たちにもなじみのある話で、キジは老若男女を問わず知られています。
4つ目は、狩猟鳥としてもなじみが深かったからです。
現在なら、「国鳥が狩猟鳥なのはおかしい」と考えるかもしれませんが、当時は「狩猟鳥である」ことも、国鳥に選ばれた理由に 挙げられていました。
こうして「キジが最も国鳥にふさわしい」ということになったのです。